はじめに,“微気象”とは何ぞや?
読んで字のごとく“微”なる“気象”ですから,想像するとこんな具合でしょうか?「天気予報で用いられる天気図の世界は,“微”とは言えないから,それよりも凄く小さな世界の気象だろう.」
当たりです!“微気象”という言葉は農業分野でよく用いられますが,新編農業気象学用語解説集(1997年,農業気象学会編)によれば,「地表面の影響を強く受ける地上10m付近までの気層内の微細な時間・空間スケールの気象現象をいう.特に気象要素の鉛直分布の差異やその成立過程を研究対象とする.」てな具合です.うーむ,難しいですね.以下に易しく解説いたしましょう.

まず,ここで農業生産現場を考えてみましょう.そこは数10m〜数100mの広がりを持った,高さが数mの空間です.まさに,用語集のとおり“微気象”の空間スケールですね.しかし,農業生産現場においては気層ばかりでなく,土層や水田の場合は水層も作物の生育環境に大きな影響を及ぼしています.したがって,私達は「土層+水層+気層」のトータルな生育環境空間を“微気象”の空間スケールとして考えた方がよさそうです.
次に,上の解説文中の“鉛直分布”も要チェックです.なぜなら,作物体の上部と下部の温湿度や日射は,特に晴れた日中などは大きく異なります.また,地温や水温も同様で,表面からの深さによって大きな相違があります.書店に並ぶ栽培法の専門書に,“この野菜の最適地温は何℃である.”といった表現を見かける場合があります.しかし,深さ何センチの地温を言っているのでしょうか?やはり,“微気象”的な発想が必要なようですね.
以上,「“微気象”は,作物の生産環境を形成する圃場スケールの“土層+水層+気層”を対象とし,その鉛直分布が大切です.」というお話をしました.
1)「気象」と「気候」の違いについて
- 気候:
- 地球上のある場所で,1年を周期として毎年繰り返される,最も出現確率の大きい大気の総合状態.
- 気象:
- 大気中に生じる自然現象および大気の状態.
時間スケールで分類するとわかり易いと思います.すなわち,1年周期の平均的な現象が「気候」で,それより時間の短い現象が「気象」です.
2)気候スケールの分類について
気候を空間スケールで分類すると以下のようになります.
- 大気候(macroclimate):
- 全球規模,直径数100km以上の空間スケールの気候
- 中気候(mesoclimateメソ気候):
- 盆地や平野など数100km〜数10km程度の気候.
- 小気候(microclimate):
- 霜道,山谷風,都市温度など数10m〜数10km程度の気象.
- 微気候(microclimate):
- 小気候と同じように使われることもあるが,特に地表から数mまでの鉛直方向の気候差に重点が置かれる.
- 接地気候(ground level climate):
- 地表の影響を強く受ける気層の気候.微気象,ときには小気候と同義で用いられる.
空間スケールは時間スケールと密接に関連しています.ですから,「微気候」や「接地気候」は短い時間スケールを論ずる場合が多いので,その場合は「微気象」,「接地気象」という言葉を用います.しかし,「大気象」,「中気象」,「小気象」という言葉は用いられていません.